2008年10月27日月曜日

初雪

ふと眼をやると、そこは雪国だった。
朝、歯を磨きながら何気なく外に目を向けるとそこには白く染まった町があった。
前日の夕方からやけに冷え込んできたなと思っていたら、どうやら夜のうちに雪が降ったらしい。

それもそのはずで前日の20度近い気温から一気に1度まで下がったのだ。
新疆の方から吹き寄せた今年初めての強烈な寒気は内モンゴルの砂漠上空を越えるうちにさらに強まり、ここアラシャンでの初雪となったわけだ。
積雪はおよそ5㎝、たいした量ではないが山の方ではさらに多い積雪があったらしい。
一夜にして山は白化粧を終えていた。
榎本は中国にきて初めて見る雪景色に心が弾んだ。
こんな日は、本来なら家で炬燵に入り、映画でも見ながら時々窓の外に目を移し、雪景色を愛でて過ごすのが榎本は大好きだった。
しかしここは中国、先日から町中に供給が開始された、温水による暖房もさほど効いておらず寒さは体の芯まで凍み込んでくる。
部屋を出ると榎本は前日とはうって変わって低まった気温にうんざりした表情を浮かべた。
だが、雪の降った後に漂うにおいが榎本は好きだ。
山と雪と体を刺すような冷たい風に含まれるその匂いはまるで自分がスキー場にいるかのような気分にさせてもくれる。
職場までの道のりを景色と匂いを楽しみながらも、榎本は日本よりもずっと早い冬の到来に自分が海外にいるのだということを強く実感させられるのだった。

次回につづく(うそ)

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